研究内容

信号システムの理論と応用

私たちの身の回りには,時間の経過とともに波形が変化する様々な信号が存在しています.例えば,音声ではほぼ同じ波形が繰り返し現れるのに対し,騒音の波形は不規則に変動します.心電図の波形では規則的なパルスが現れるのに対し,画像の断面波形はゆっくりと変化します.数学的手法を用いて信号の特徴を解析し,その解析結果に基づいて,コンピュータを使って便利な信号に変換したり,意味のある情報を抽出することを信号処理といいます.例えば,雑音成分を取り除いて元のきれいな信号を取り出すこと,過去のデータに基づいて未来の値を予測すること,無駄な成分を取り除いてコンパクトに表現すること,どの周波数成分をどれくらい含んでいるかを解析すること,などがあります.このような技術は,スマートフォン,インターネットなど身近なところで用いられています.優れた信号処理システムを設計するために,信号の特性を解析し,その特徴をうまく利用した効率のよい処理アルゴリズムを開発しなければなりません.そこで,信号解析論,システム解析論,スペクトル解析論などの数学的な理論を駆使して,人間のもつ予測・適応・学習・推論・判断などの柔軟かつ知的な情報処理機構を工学的に応用することを目指し,推定精度,追随性能,計算量を評価尺度に取り入れたシステム解析手法と処理方法について研究を行っています.さらに理論のみにとどまらず,雑音除去,信号特徴抽出と識別,信号分解,信号変換,画像復元など,具体的事例を対象とした応用研究も行っています.

生物の視覚特性を利用した文字復元

生物の視覚特性を利用した文字復元

音声音響システム

声はコミュニケーションにおける最も基本的なメディアです.音声メディアによるコミュニケーションは,人と人とのコミュニケーションだけでなく,音声認識技術により人と機械のインターフェースとしても重要です. 音声によるコミュニケーションにおける大きな問題として,「目的とする音だけを取り出す」技術があります.携帯電話の普及により,様々な騒音環境下で音声通話が行われるようになり,騒音を除去して音声だけを取り出すことが大きな課題となっています.そこで,騒音の特性は音声よりゆっくり変化するという性質に着目し,音声の特徴を自動的に学習しながら音声成分のみを抽出し,雑音を取り除くことができる適応システムを開発しています.また,複数の音声から目的の音声だけを取り出す「音源分離」の研究も行っています.人の聴覚には,いろいろな人が同時に話しても,ある特定の人の声だけを聞き分ける能力があります.これは,それぞれの人が持つ音声固有の性質を聴覚がとらえているからです.このような人間の優れた情報処理機構を,数学的理論を駆使することで計算機上に実現し,混合音声を特定の特徴を持つ信号へ分解することで音声分離を実現しています.

雑音除去システムを搭載した携帯電話

雑音除去システムを搭載したスマートホン

4人が同時に話した声を聞き分ける

4人が同時に話した声を聞き分ける

数学モデルが明らかにする画像処理アルゴリズム

画像処理システムにおいて,『人間の認識能力を実現する』というのは最大のテーマの一つです.我々は日常生活で様々な画像処理を行なっています.雑踏の中で待ち合わせの人を探す.電車の中で広告を読む.出かける前に服の柄合わせをする.見難い文字に目を凝らす.誰もが当然のように行なっていますが,これらは人検出・文字認識・テクスチャ解析・焦点推定と呼ばれる高度なアルゴリズムにより実現されています.そしてそれらを高精度にコンピュータに代替・実現させるのは,現状では困難です.何故ならば,そこに隠されている『理論』がまだ明らかになっていないからです.フラクタル理論,モルフォロジー演算,ラプラシアン階層など様々な数学モデルを用いて,これらを理論的見地から解明する研究を行なっています.人間の認識能力を理論で再現することは,現代社会で実施されている作業の機械化・高速化に繋がります.それらは膨大な人的資源を要求するもの,専門的技能を要求するもの,身の危険を伴うものなど多岐に渡ります.人間の認識能力を理論的見地から解明し,システムによって再現・代替されることは,安全で豊かな社会の実現に繋がります.

自己相似性に基づいた自然画像のセグメンテーション 自己相似性に基づいた自然画像のセグメンテーション

自己相似性に基づいた自然画像のセグメンテーション

劣化した絵画の仮想修復 劣化した絵画の仮想修復

劣化した絵画の仮想修復